「櫛になりたや薩摩の櫛に 諸国娘の手に渡ろ」
江戸時代から製作されはじめた薩摩産の柘櫛は、現代でもなお、その素材としての質の高さは折り紙つきです。
そんな高級木材として名高い薩摩産の柘=薩摩本柘ですが、現在はその90%近くが櫛ではなく、印鑑用の素材として利用されています。
硬さ、耐久性、緻密さに加えて、見た目の美しさを兼ね備えた薩摩つげは、認印から実印、銀行印まで幅広く印材として採用されています。
今回は、そんな薩摩本柘の印鑑について、その特徴から価格相場、お手入れ方法まで説明していきたいと思います。
薩摩本柘の印鑑の価格相場
薩摩本柘の印鑑を作成した場合、いくらぐらいの費用が掛かるのかという点について、女性用は15cm、男性用は16.5cmをサンプルとして、国内の印鑑販売サイトの価格相場を実印をベースに調査いたしました。(参考記事/「実印の大きさ(規定サイズ)について~女性用と男性用~」)
薩摩本柘(女性用/15cm) | 薩摩本柘(男性用/16.5cm) | |
---|---|---|
はんこプレミアム | ¥2,980 | ¥3,880 |
ハンコヤドットコム | ¥4,200 | ¥5,200 |
ハンコマン | ¥3,180 | ¥4,000 |
はんこdeハンコ | ¥2,980 | ¥3,880 |
いいはんこやどっとこむ | ¥2,980 | ¥3,580 |
印鑑市場 | ¥3,900 | ¥5,000 |
ハンコヤストアドットコム | ¥2,880 | ¥3,780 |
印鑑の匠 | ¥2,480 | ¥2,880 |
平安堂 | ¥9,800 | ¥12,800 |
はんこキング | ¥3,619 | ¥4,476 |
国士堂 | ¥5,750 | ¥6,370 |
畑正 | ¥10,800 | ¥11,800 |
相場価格(平均) | ¥4,629 | ¥5,637 |
薩摩本柘の魅力は何と言っても、その普遍的な色合いの美しさですが、その他にも、高い硬度、そして木の表面が非常にキメ細かく、塗装などを施さなくても非常に肌触りが良いといった特徴が挙げられます。
また、表面の色味が黄色という特徴から、柘の別の表記方法として「黄楊(つげ)」の漢字が用いられることもあります。
薩摩柘が高級櫛や高級箸などに用いられていることは有名ですが、他にも、任天堂が発売している将棋の駒でも最上級の駒の素材として扱われていることからも、その素材としての肌触りの良さ、そして、高級木材として高く評価されていることが窺えます。(参考/任天堂の将棋駒・・・泰黄楊・特上彫)
また、近年では、西洋柘の生産が落ちていることから、チェスの駒や弦楽器の素材として薩摩柘が利用されていたりと、その利用範囲の幅を広げています。
ただし、薩摩柘の生産は商用木材として価値が出るまでに長い時間がかかるだけでなく、生産管理も容易ではないため、希少性の高い素材となっておりまして、その希少性が価格に反映される形となっています。
薩摩本柘の色について
薩摩本柘は黄楊と表記されるように、その色目は自然な風合い漂う「やや黄色がかった木目色」になります。
(写真/ハンコヤドットコム)
実印や銀行印といった長い期間にわたって使用する大切な印鑑の場合、飽きのこない普遍性が印鑑を選ぶときの重要なポイントになりますが、その点では、薩摩本柘は大変価値の高い印材ということが言えるでしょう。
薩摩本柘の特徴について
薩摩本柘は、杉やヒノキとは異なり、生産管理が難しいことで知られ、水はけのいい土壌で、半日陰の場所で育てながら、北風や害虫、水害などによる腐食やシミを防ぎつつ、15~20年かけて3回以上の移植を経て、ようやく商用利用されます。
しかも、高い品質を守るためにも、シミが少しでもあると出荷させないという徹底ぶりです。
そんな薩摩本柘について、印鑑として使う場合の素材の特徴を見ていきたいと思います。
〇耐久性について
薩摩本柘はもともと、自然な木材であることから、チタンなどの印材に比べると、耐久性は落ちます。
例えば、汗水や乾燥、直射日光、多湿などといった木材にストレスがかかる環境下では、どうしても素材に悪影響が出て、ひび割れや歪み、変色などが起こったりすることがあります。
ただ、実印などでは、それほど使用頻度も高くないと思いますので、耐久性の面ではそれほど、心配する必要はないかもしれません。
一方、認印などの日常的に使用する印鑑として利用する場合は、保管やメンテナンスには注意する必要があります。
〇耐熱性について
柘そのものは、もともと温帯から亜熱帯地方で生育するため、木材としては耐熱性は高いと言えます。
とは言いましても、もともとが自然素材ですので、例えば、台所や暖房器具の近くなど一時的に高い温度にさらされるようなところに保管しておくことは、あまりおすすめできません。
〇硬度は高く、粘着性もある
木材としては決して高さが出る木材ではなく、また、成長スピードが遅いことから、柘植の繊維は非常に緻密で、硬度が高い素材です。
また、その繊維の細かさに加えて、加工性や粘着性にも富んでいることから、弦楽器や彫刻材などにも利用されるほどです。
薩摩本柘が持つ硬さと粘着性は、絶妙な肌触りの良さを感じさせてくれます。
〇見た目の美しさ
薩摩本柘は派手さはないものの、自然のぬくもりを感じさせる普遍的な美しさを持った印鑑です。
ただ、象牙やチタンといった個性溢れる印材に比べると、やや見た目のインパクトは劣ると言えるかもしれません。
実印や銀行印のような印鑑を選ぶときに、個性的な印材を採用したいという人にはあまり魅力的とは映らない可能性があります。
〇陰影の美しさ
薩摩本柘はその粘着性の良さから、朱肉に馴染みやすく、とてもマイルドで綺麗な陰影を押すことができます。
ただし、素材としてとても繊細であるため、捺印後はすぐに朱肉を拭き取るなどのこまめな手入れをしないと劣化が進んでしまいかねません。
薩摩本柘のお手入れと保管について
薩摩本柘は江戸時代から愛用され、多くの人から高い評価を得ている国産の最高級木材の一つですが、その繊細さ故に保管には十分気を付ける必要があります。
多湿、高温、乾燥、直射日光などを避け、ケースに入れて、大切にしまっておきましょう。
メンテナンス方法としては、水で直接洗ったりすることは控えて、乾いた布などで小まめに汚れを拭き取ってください。
また、捺印後はしっかりと朱肉をふき取りましょう。
まとめ
「薩摩本柘の印鑑の価格相場~特徴からお手入れまで~」と題してお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
薩摩本柘の印鑑の購入について、読者の方の参考になれば幸いです。
スポンサーリンク