自分が住んでいる(あるいはこれから住む予定の)市区町村役場に登録する印鑑である「実印」は、自動車や不動産の契約など多額の金銭を伴う取り引きや、就職や入学といった人生でも重要な局面で利用する、とても大切な印鑑です。
また、これから実印を作成するという方のために補足しておきますと、実際の契約などのシーンでは、実印だけを使用するということはなく、印鑑登録後に発行することができる「印鑑証明書」とセットで使うという、やや手間のかかる仕組み(本人確認のためのシステム)になっています。
そんな大切な実印を作成するにあたって、今回は、「実印(印鑑証明用の登録印鑑)をフルネームにするべき理由」について説明したいと思います。
先に、印鑑登録ってそもそも何?という方は、こちらの「印鑑登録・印鑑証明ってそもそも何?」をご覧いただければと思います。
※なお印鑑登録は、住民票を置いてあるところで行いまして、引っ越しをした際は、その居住地の市区町村役場で再登録する必要があります。
目次は下記になります。
では、早速見ていきましょう。
本人確認としての実印と印鑑証明書
実は、現在の日本の法律的には、欧米諸国と同様に本人自身がサインした「署名」だけでも契約として有効なものとされています。(政府が公開している商法/第三十二条/第八章 雑則はこちら)
つまり、単純に法的に有効な契約書を作成するためだけなら、実印と印鑑証明書がなくてもできるということです。
しかしながら、現代の日本では、重要な契約書にになればなるほど、サインだけで済ませるということは、まずありません。
その背景には様々な要因がありますが、企業側の論理としては、なりすましによる詐欺やアルバイトによるSNS上での悪ふざけ(ツイッターなどで悪態を晒したりすること)などが原因で実際の店舗が倒産したりなど、”本人確認”(未成年者との契約の場合は連帯保証人や後見人も)が重要になっているということが挙げられます。
なぜなら、企業側で何らかの問題が発生して不利益を受け、その不利益の原因となった人間が仮になりすましだった場合、本人確認の徹底を怠った点を必ず問題視されます。
つまり、なりすましを見抜けなかった管理体制の杜撰さに対して、株主や社内から責任の追及を受けるということです。
また、一時的なSNS上の悪評が原因で、店舗の閉鎖といった現実的な損害が発生した場合は、その損害賠償請求については、原因を作った本人あるいは、その連帯保証人に対して行われますので、そういったリスクを担保するためにも、本人確認の徹底が企業側に求められます。
逆に、一個人として、実印と印鑑証明書を提出する立場から見てみますと、一見、手間のかかるこの本人確認システムは、署名だけで契約を結ばれてしまうというリスクを低減しています。
仮に、日本もサインだけでどんどん契約を結ぶことができるとなりますと、日本のように連帯保証人制度が根付いた国では、自分の全く知らないところで、何者かに勝手にサインされて連帯保証契約を結ばされるリスクが常にあるということになります。
では、欧米はどうなってるの?と言いますと、欧米は商習慣も違えば法律も異なっています。
例えば、欧米では契約時に連帯保証人を用意することは基本的になく、マイホームを購入するような高額の契約などでも連帯保証人を用意するといったことはほとんどありません。そして、仮に住宅ローンが払えなくなった場合も、ローンの残債はゼロになります。(その分、金利にリスクが乗せられるので、支払金利は日本に比べて高いです)
日本と欧米では、法律や社会的慣習が異なっているために、本人確認の仕組みが違うということはお分かりいただけるかと思います。
それでは、そうした背景を踏まえつつ、「実印(印鑑証明用の登録印鑑)をフルネームにするべき理由」について見ていきたいと思います。
実印と印鑑証明書はオリジナルが大原則
市区町村役場に印鑑登録された実印は、紛れもなく本人の印鑑であることを証明するためですので、作成にあたっては、完全オリジナルな印鑑であることが重要になってきます。
言い換えれば、シャチハタや三文判のようなどこでも買えるような印鑑を実印として登録してしまうと、簡単に”なりすまし”を許してしまうようなことになりかねず、そもそも本人確認のための仕組みとしての実印と印鑑証明書としての機能を放棄しているといっても過言ではありません。
実は、市区町村役場によっては、三文判やシャチハタのような印鑑を登録できてしまうところも実際にあるようです。かなりリスクが高いと思います・・・。
当サイトでは、印鑑証明書や実印を使った事件をサイト開設以来、ずっと追いかけていますが、毎年のように、実印と印鑑証明書を利用した詐欺事件が起こっています。(被害規模が比較的、軽い事件もあれば、公正証書を利用した重大な事件まで利用される範囲は幅広いです)
トラブル予防や回避には、様々な方法がありますが、そうした事件に巻き込まれないためにも、まずは、実印作成にあたって、自分だけのオリジナルの印鑑を作るべきだと筆者は強く思います。
では、ここからはもう少し、細かいポイントを見ていきたいと思います。
苗字だけ・・名前だけ・・の実印は大丈夫?
こちらも市区町村役場によっては、登録できるようです。
しかしながら、筆者は複製されにくいというトラブル予防策として、フルネームでの登録をオススメします。
近年の技術では、印影から、印鑑を複製することは技術的に簡単になってきていますので、文字数は出来るだけ多く、しかも複雑であればあるほど、複製の難易度はあがります。
これは、パスワードで英数字に大文字と小文字を組み合わせた方が、より強固なパスワードになるようなイメージで大丈夫だと思います。
よく、女性の場合は、結婚すると苗字が変わることがあるので、名前だけの実印を作成するといったケースを耳にすることがありますが、筆者はあまりオススメできません。
また、家族で同じ名字の印鑑を実印として登録して使ったりなども同様に、オススメできません。
複製されるリスクと、実印の値段を考えた場合に割に合わないと思います。
ネットでも自分だけの実印を安く購入できる時代になっている今、結婚後に苗字が変わった場合は、フルネームの新しい実印を用意する方がトラブル予防策としても安全だと思います。
パスワードもそうであるように、変化がないよりは、変化があった方が、より安全性も高まるでしょう。
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フルネームの実印を作成するときの値段について
フルネームにすると、実印作成時に値段が上がるかどうかという点については、文字数によるかと思います。
例えば、苗字と名前のフルネームの文字数が日本で最も長い名前は12~15文字と言われています。
江川富士一二三四五左衛門助太郎(15文字)
後部屋新九郎左衛門介之亟(12文字)
文字数が多い→印鑑サイズが大きくなる→値段が上がるといったケースは、10文字を超えるようなケースに限られるようです。
つまり、よほど長いフルネームでない限り、値段は変わらないということになります。
※ただし、文字にこだわったりする場合は、印鑑の大きさにも影響が出てきますので、値段に違いが出てきます。
まとめ
「実印(印鑑証明用の登録印鑑)をフルネームにするべき理由」と題して、実印と印鑑証明書の仕組みと社会的な背景から、実際に作成するときのポイントまで説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
実印作成のヒントになれば、幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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