中古車の購入や売却には数多くの書類が必要になりますが、今回はその中でも当サイトのメインテーマである印鑑証明がどういったときに必要で、必要ないのかということを条件別に詳しく見ていきたいと思います。
具体的な条件の説明に入る前に、印鑑証明が必要になる重要なポイントを掴んでおくと理解が深まるかと思いますので、まずはざっくりと重要なポイントを見た後、条件別に見ていきたいと思います。
早速、見ていきましょう。
中古車の購入や売却で印鑑証明が必要になるポイントとは?
中古車の購入や売却において、印鑑証明が必要になるかどうかのポイントは大きく3つに分かれていまして、それをまとめたものが下記の表になります。
中古車の売買で印鑑証明に関わる重要ポイント | |
---|---|
所有者名義 | 自動車を保有している人の名前 |
自動車の種類 | 普通乗用車か軽自動車か |
売買契約をする人 | 本人?家族や知人などの代理人? |
それぞれについて簡単に説明させていただきます。
〇自動車の所有者名義
自動車を購入するときにローンで購入するという方は少なくないかと思いますが、ローンが残っている間は、自動車の所有権はローンを提供する信販会社や銀行、そして自動車を販売するディーラーになっているというのが一般的です。(必ずというわけではありません。自動車ローンを組んでいても、所有者名義が本人になっているケースもあります。)
そして、中古車の売買において、自動車の所有権が自分になっているのか、あるいは他人になっているのかという点は、印鑑証明が必要になるかどうかの重要なポイントの一つになります。
なぜなら、普通乗用車は家やマンションなどと同様に、「資産」として法務局(登記所)に「登記」を行う必要がありまして、その申請には印鑑証明の添付が義務付けられているからに他なりません。
第三章 登記事項の証明 |
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第二十二条 登記事項証明書の交付の申請書には、次に掲げる書面を添付しなければならない。(登記事項証明書の交付の申請書の添付書面) |
一 申請人の印鑑の証明書であって市町村長の作成したもの(法人にあっては、代表者の印鑑の証明書であって登記所が作成したもの) |
つまり、中古車の売却や購入を通じて、普通乗用車の所有者が変わるときには、法務局(登記所)への登記申請に印鑑証明が必要ということになります。(次で説明しますが、軽自動車はその必要がありません)
なお、新しい所有者だけでなく、元々の所有者の印鑑証明書も必要になります。
その理由としては、土地や家屋などと同様、売主が自らの意思を持って、売却を決めたということを証明するために、印鑑証明と実印による押印が必要になるからです。
その背景には、売主が誰かに騙されたりして、本当は売りたくないのに売却されてしまったり(売主の不利益)、売主が後で、心変わりをして売るつもりはなかったと言い出して争いがおきることを防ぐという目的があります。
参考/実印と印鑑証明書が揃った契約書を無効にすることが大変な理由とは?
では、現在乗っている自動車の名義が誰になっているのかを確認するには、どうすればいいのでしょうか?
最も簡単な方法は車検証を確認するという方法です。
現在、車検証は2つのタイプがありますが、どちらの場合でも所有者が誰になっているかということは、車検証を見れば一発で分かります。
〇自動車の種類 -普通乗用車?それとも軽自動車?-
先ほど、普通乗用車は法務局(登記所)へ「登記」する必要があるため、所有者名義が変わるときには、印鑑証明が必要になるという説明をしましたが、軽自動車は同じ自動車ですが、実は「登記」の必要はありません。
軽自動車の場合は、軽自動車検査協会が管轄する事務所に住民票と認印(法人の場合は登記簿謄本と代表印)を添付して申請すればOKとなっています。
軽自動車の申請に必要なもの | |
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新しい所有者(個人) | ・認印 <下のいずれかの書類一つ> ・住民票の写し(マイナンバーが記載されていないもの) ・印鑑(登録)証明書 |
新しい所有者(法人) | ・代表者印 <下のいずれかの書類一つ> ・商業登記簿謄(抄)本 ・登記事項証明書 ・印鑑(登録)証明書 |
旧所有者 | ・個人の場合は、認印 ・法人の場合は、代表者印 ※自動車検査証記入申請書または申請依頼書の旧所有者の欄に押印したものをお持ちいただいても結構です。 |
〇本人が契約する?それとも代理人?
「遺産として自動車を相続する予定だけど、車に乗らないので売りたい」
「主人が忙しいので、妻の私が代わりに車を売却したい」
こんな風に、本人に代わって中古車を売却するといったケースは少なくないかと思いますが、こうしたケースで、代理人にお願いする「委任者」となる場合は、印鑑証明書と実印による押印が必要になることがあります。(中古車「購入」の場合は必要ないことがほとんどです。)
なぜなら、代理人に中古車の売却を委託する場合、「委任状」が必要となり、その委任状が正真正銘の委任状であるということを証明するために、実印による押印と印鑑証明書が必要になるからです。
上記は委任状のテンプレートとその記入例で、「委任者」の欄で実印で押印をするといった形になります。
また、契約にあたっては、代理人そのものが”なりすまし”ではなく、紛れもなく本人であるということを証明するために、代理人の印鑑証明書と実印が必要になる場合もあります。
なお、委任状サンプルが必要という方のために、委任状のひな型をご用意していますので、ご入用の方は下記よりダウンロードしてお使いください。(無料)
条件別/中古車の「購入」と印鑑証明
まず、最初に中古車を購入する場合について、条件別に見ていきたいと思います。
〇普通乗用車の中古車を現金一括などで本人が購入した場合
中古の普通乗用車を現金一括などローンなしで購入した場合、所有者名義は本人にすることが一般的ですので、登記所での名義変更(変更登記)に伴い、購入者の印鑑証明と実印による押印が必要となります。
〇普通乗用車の中古車をローンで本人が購入し、所有者名義がローン会社などの場合
普通乗用車を中古で購入し、その代金の支払いをローンで契約した場合は、一般的に所有者名義がディーラーやローン会社になりますので、登記所への申請はディーラーやローン会社名義で行うことになります。
この場合、購入者となる方はローンの支払いが終わり、所有者名義を変更登記するまでは、印鑑証明が不要になります。
〇軽自動車の中古車を本人がローンなしで購入し、所有者名義が本人の場合
中古車の軽自動車を現金一括などで購入した場合は登記の必要がありませんので、印鑑証明書や実印による押印は必要ありません。
ただ、その代わりに軽自動車検査協会に届け出るときに「住民票」と「認印」は必要になります。
〇軽自動車の中古車をローンで本人が購入し、所有者名義がローン会社などの場合
軽自動車を中古車でローンで購入して、その所有者名義がローン会社やディーラーになっている場合も印鑑証明書や実印による押印は必要ありません。
軽自動車検査協会への届け出は、ローン会社やディーラーが所有者名義に、使用者名義が本人という形になります。
条件別/中古車の「売却」と印鑑証明
では、続いては売却するケースも見ていきましょう。
〇ローンを完済した普通乗用車の中古車(本人名義)を売却する場合
ローンをすでに払い終わっていて、所有者名義が本人になっている普通乗用車を中古車買取店やディーラーに下取りしてもらう場合、印鑑証明書と押印が必要になります。
一つは登記所での変更登記のために、そして、もう一つは中古車買取店との間で結ぶ売買契約用の添付書類となります。
〇ローンが残っている普通乗用車の中古車(本人以外の名義)を売却する場合
ローンがまだ残っている普通乗用車を売却する方法には、幾つかの方法があるのですが、いずれの場合も所有者の名義がディーラーや自動車販売店のままでは、基本的に他の人に売却できません。
つまり、まず最初にディーラーや自動車販売店に所有権を解除してもらうために、先にローンの残額を一括返済して所有権を解除してもらう必要があります。
流れとしては、一旦、所有権の解除をして、登記所で名義変更を行い(印鑑証明書1枚目)、その後に、中古車買取店などに売却して(印鑑証明2枚目)、最後に名義変更用に印鑑証明(3枚目)を提出するという流れになります。
これまでに見てきた中では、もっとも印鑑証明書と実印による押印が必要になるのが、このパターになります。
ちなみに、ローンの残額を払い終わらないと車を売ることはできないというわけでは決してなく、例えば、中古車販売大手のガリバーなどでは、新しい中古車を自社で購入してくれるお客様に対して、前の車のローンの残りを”スライド”してくれるというサービスを展開していたりもします。
すべての自動車販売店がこうしたサービスを提供しているわけではありませんが、ローンが残っている普通乗用車を売りたいと考えている人にはありがたいサービスの一つと言えるかと思います。
〇ローンを完済した軽自動車の中古車(本人名義)を売却する場合
ローンを完済済みの軽自動車(本人名義)を売却する場合は、印鑑証明書と実印による押印は必要ありません。
旧所有者として、住民票と認め印があれば、大丈夫です。
〇ローンが残っている軽自動車の中古車(本人以外の名義)を売却する場合
残債がある軽自動車を売却するためには、ディーラーや信販会社へ残債を一括返済して所有権を解除してもらった後、所有者の名義変更を軽自動車検査協会に届け出る必要がありますが、軽自動車は普通乗用車とは異なり登記所での名義変更の必要がないため、印鑑証明書と実印による押印は必要ありません。
ただ、軽自動車を中古車買取店などに販売する際、買取店が売買契約を結ぶときの本人の意思確認のために、印鑑証明書と実印による押印を求めてくるケースがあります。
これは、売主が車を売却した後に、「あの契約は無効だ!」といったことが起こらないようにするためです。
法律的には、認め印やサインでも契約は有効とされますが、印鑑証明書と実印による押印が揃った契約書は、過去の判例などでも契約の有効性が最も担保されることから、高額な金銭が絡む取引では印鑑証明書と実印による押印が求められることが多くなっています。
〇普通自動車の中古車を代理人が売却する場合
上の例では、高齢ドライバーが免許返納を機会に自動車を売却するイメージを参考にしていまして、例えば、車の所有者名義である本人が家族に車の売却を委託する場合、本人が委任者に、任された人が受任者という形になります。
そして、このとき車の所有者は委任状に委任者として実印による押印、そしてそれを証明するための印鑑証明書をセットで受任者に渡します。
これで、紛れもなく車の所有者が本人の意思を持って、代理人に委任したということになります。
また、車の買取を行う買取店によっては、代理人となる受任者が”なりすまし”でないことを確認するために、代理人の印鑑証明書と実印による押印を求めるケースもあります。
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まとめ
「中古車の購入や売却には印鑑証明がいる?いらない?条件別に徹底解説!」と題してお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
これから中古車の購入や売却を考えているという方に参考にしていただければ、幸いです。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
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