遺産相続には、その相続の内容(土地、建物、銀行預金、株式、債券、その金融商品、美術品、宝石など)、そして相続の方法(複数人、一人、遺言、法定相続)など、ケースに応じて、実に様々な書類が必要となりますが、ここでは印鑑証明書と実印による押印が必要になるケースについて説明したいと思います。
今回の記事作成にあたり、当サイトの監修及び業務提携を行っている税理士、宅地建物取引主任及び司法書士などの実務家にヒアリングを行いました。なお、法律、判例の解釈については、各専門家により見解が異なることがありますので、その点は予めご了承ください。
では、早速見ていきましょう。
単独での遺産相続の場合、実印による押印や印鑑証明書は基本的に不要
遺産相続において、相続する人が一人だけという場合は、基本的には実印による押印や印鑑証明書は必要ありません。
たとえば、不動産を相続することになって、不動産登記をする場合は、所有権移転登記が必要になりますが、その際も相続人が使用する印鑑は認印で問題ありません。
所有権移転登記については、仮に売買であっても不動産を取得する側の人に対して、印鑑証明書の提出と実印による押印は求めないというのが現状です。
ただし、所有権移転登記に際して、代理人に依頼する場合は、委任状と委任状への実印による押印と印鑑証明書の提出が必要になります。
また、遺産に預貯金があり、それが銀行にある場合などは、払い戻し申請のときに銀行によっては、印鑑証明書と実印による押印が求められる場合があるかもしれません。(大抵の場合は、免許証やパスポートなど本人確認できるものがあれば、大丈夫だと思います。)
相続人が複数いる場合で遺産分割協議書を作成する時
遺産分割協議書の説明に入る前に、まず、現在の日本の法律では契約書を作成するにあたっては、本人の自署=サインだけでも契約書として成立します。
つまり、実印や認印などの印鑑も必要ないということです。
しかし、法律上の解釈ではそうなっていますが、実際には、大事な契約書の作成には、なりすまし防止や本人確認としての担保のために、印鑑証明書の添付や実印による捺印が求められています。
例えば、遺産分割協議書の作成において、第3者が誰かのサインを装って、遺産相続が勝手に決まってしまっては、問題が後を絶ちません・・。
仮に偽装されても、裁判所に訴訟を起こし、そうしたなりすましの真偽を正して、正当な相続権利を主張すれば、いいかもしれませんが、あまりに非効率的な社会システムになってしまいます・・。
そうした背景があって、遺産分割協議書の作成時には、相続人全ての印鑑証明書の提出と協議書への実印による捺印が求められます。
その意味としては、相続人すべての本人確認(印鑑登録を行った市区町村役場の長がそれを保証しています)及び、遺産分割協議書の本人の意思による同意があったと推定されるということになります。
遺産分割協議書の作成において、印鑑証明書と実印による捺印はセット
遺産分割協議書においては、相続される遺産と相続人の関係などによっては、とても複雑なものになります。
さらに協議を行うと言っても、相続人の中には他府県に住んでいる人や海外に住んでいる人もいて、協議そのものが簡単に行える状況にないという場合もあるかもしれません。
そんなときに、便宜上、書類だけは先に集めておきたいというときに、各相続人に対して、印鑑証明書の送付を求められる場合があるかもしれません。(海外在住の場合は拇印証明書などを発行します。)
「大切な印鑑証明書の送付を先に・・と言われても、送ってしまうと勝手に決められてしまうのでは・・」と考えてしまう人がいるかもしれませんが、実際には、遺産分割協議書の作成において印鑑証明書だけでは、その効力はありません。
あくまで、印鑑証明書は遺産分割協議書への実印による押印がセットになって、はじめて効果を発揮するものです。
ただし、現代の技術をもってすれば、印鑑証明書の陰影から実印を作ることはそれほど難しいことではありませんので、慎重に慎重を期す場合は、事前に印鑑証明書を送るようなことはせず、遺産分割協議書に押印をする際に、印鑑証明書も提出するということにすれば問題ないでしょう。
残高証明と印鑑証明
そもそも相続財産は本当にあるの?という疑問を持つ人もいるかもしれません。
土地や建物であれば、登記事項証明書はだれでも取得できますので、簡単に確認ができますが、銀行にある預貯金の残高は銀行に残高証明を出してもらう必要があります。
銀行に残高証明書を依頼する場合には、故人の死亡を確認できる謄本、申請者が相続人であることを確認できる戸籍謄本、銀行への残高証明発行依頼書に加えて、申請者の印鑑証明書の提出が必要になります。
代理人や遺言執行者が残高証明の発行を依頼する場合は、その人たちの印鑑証明書(代理人の場合は、委任状など)が必要になります。
そうした手続きを経て、残高証明書が銀行から交付されるのですが、銀行側からすれば、印鑑証明書の発行は本人確認を担保するには欠かせない書類になっているということがお分かり頂けるかと思います。
なお、銀行によっては、多少、提出を求める書類が異なる場合があります。
まとめ
「印鑑証明書及び実印による押印と遺産相続について」について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
読者の方の参考になれば、幸いです。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
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