近年、twitterやfacebookをはじめとするSNSでのアルバイトやパート社員などによる「不適切な投稿」がきっかけとなり、実際に店舗が閉店に追い込まれたりするといった事例が起こり、社会問題となっています。
企業側としては、従業員の管理責任はもちろん問われますが、「不適切な投稿」を行った従業員に対して訴訟を起こすなど、SNSの流行により、労働者と会社の関係も新しい局面を迎えていると言えます。
そうした現代ならではの点も踏まえて、今回は「就職した会社の入社時に印鑑証明の提出が必要な理由」について説明していきたいと思います。
なお、今回の記事は、ある東証一部上場企業の広報部、人事部の方と、「ソーシャルメディア時代における本人確認及び採用」についてという題目で議論を交わした内容を整理したものになります。
では、早速見ていきましょう。
本人確認はこれからも必須
ほとんどのビジネスマンやビジネスウーマンには無縁の話ですが、残念ながら、ビジネスの社会において、経歴詐称は決して珍しいことではありません。履歴書や職務経歴書での年齢のサバ読み、学歴詐称、自分に都合の悪い情報の隠蔽などなど、細かいことまで挙げるとキリがないほどです。
また、企業側からすると、社員による横領事件や冒頭で説明したSNSによる「不適切な投稿」などが起きると、財務的に余裕がない中小企業は、倒産に追い込まれたりすることすらあります。
そうしたリスクに加えて、近年は企業側にも法令順守が厳しく求められている風潮があり、レピュテーションリスク(風評・評判の悪化リスク)は決して軽視できないのが現状です。
ここでの問題の本質は、個人が起こした事件により企業全体のイメージや業績まで悪化して、それまで真面目にその企業に勤めている人が職を失うなどの生活の危機に晒されたりする可能性があるということです。
企業側とすれば、いくら人手不足とは言え、「なぜそんな素性の怪しい人間を採用してしまったのか・・?あるいは、なぜ、”なりすまし”をするような人間の採用を見送ることができなかったのか?」という疑問が起こります。
企業の内部で事件を起こす人には長年、真面目に勤務してきた人間が出来心や借金を重ねて事件を起こすことも少なくありませんが、それでも経歴詐称などを行う人間や本人であることの裏付けを取ることができない人は少なくとも採用を見送ることができたはずです。
そういった意味では、企業側が住民票やパスポート、印鑑証明書などの本人確認書類の提出を求めるのは理にかなっています。
中でも、印鑑証明は実印を購入して、それを居住している市区町村役場に登録して、印鑑証明書を発行するという”手間”がかかっているというだけでなく、その”仕組み”としても本人確認書類としては、最も機能する書類の一つと言えます。
過去の判例が物語るように、仮に雇用契約書に押した印鑑を巡って、契約書の無効・有効を問うといった訴訟などに発展した場合も、実印による「押印」と印鑑証明書のセットは、「2段の推定」が働くことから、紛れもなく、本人が会社と雇用契約を結んだということを立証できる可能性が極めて高く、会社としては”何か”あったときのためのリスクヘッジとして、最も有効な手立ての一つです。
参考/実印と印鑑証明書が揃った契約書を無効にすることが大変な理由とは?
実際に、法人間の重要な契約書や取引には、双方の存在を証明するために必ずと言っていいほど、双方の印鑑証明書と実印による押印が求められるほどですし、人を雇用するという会社と就職したいという労働者の間の重要な雇用契約において、入社時に本人確認のために、印鑑証明書の提出が必要になるのはそうした観点から考えれば、当然と言えるでしょう。
横領・・損害賠償・・リスクと保証人
企業が従業員に損害賠償を求めるケースとしては、売上金の持ち逃げや物損や車両事故など様々ですが、そうしたときに短期のアルバイトや非正規社員が”なりすまし”だったら企業としては、最悪、回収できないといったリスクがあります。
企業が事前に実印による捺印と印鑑証明書の提出を求めるといった本人確認の徹底を行うことで、そうしたリスクを低減しようとするのは自然な流れと言えるでしょう。
また、SNSによるたった一つの投稿が店舗を閉鎖に追い込むなどの被害の大きさを考えますと、企業が”なりすまし”を未然に防いだり、仮に損害が発生した際にも本人を特定できないといったリスクのために、実印による押印と印鑑証明書の提出を必要とするのも頷けるかと思います。
また、アルバイトや非正規社員が未成年などの場合は、親や近親者などの保証人及び保証人の実印と印鑑証明書を求めるといったケースもあります。
架空取引・不正取引
読者の方もメディアなどでも取り上げられる「不正取引」や「架空取引」といった言葉は耳にされたことがあるのではないでしょうか?
「不正取引」や「架空取引」の実態には様々なケースがあるのですが、その中に親会社に隠れて子会社の経営者や経営幹部が架空の人物を入社させたり、あるいは他人の名義を利用して行うといった類の「不正取引」や「架空取引」があります。
カラクリとしては、子会社の経営者や経営幹部が架空の人物を入社させたことにして、その架空の人物に給料を振込、そしてそれを自分のポケットに入れてしまうといったもので、明らかに違法です。
親会社としては、そうした経営者や経営幹部の悪事を未然に防ぐために、採用する人の本人確認のために実印と印鑑証明書を求めるというケースもあります。
こうしたケースは非常に稀ですが、”そんな理由のために・・”印鑑証明書を求められるのは何ともやりきれない思いが募りますが、実際に過去に起こったケースで、企業側としては、手間がかかったとしても”再発防止策”として本人確認の徹底を求めるのは致し方ないといった面もあります。
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まとめ
「就職した会社の入社時に印鑑証明の提出が必要な理由とは?」と題してお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
採用される側からすると、実印と印鑑証明書を求められるというのは、「そこまでする?」と感じる方もいるかもしれませんが、本人確認を徹底するという企業の姿勢にはそれなりの背景があるということはお分かりいただけたのではないでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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