会社の利益や納税額などに大きな影響を与えることから、国税庁や税務署などの税務調査があったときに、最もチェックされやすい「役員報酬」
今回は、そんな役員報酬の変更の手続きの流れと株主総会または取締役会議事録の書き方や押印する印鑑などについて見ていきたいと思います。
本記事の見出しは下記の通りです。
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1 | 役員報酬変更の手続きの流れ |
2 | 役員報酬変更の検討から決定、議事録の作成までは原則3ヶ月 |
3 | 株主総会と取締役の議事録と合同会社の同意書の作成について |
4 | 役員報酬変更を税務署へ届け出るときの必要な条件や必要書類について |
5 | 役員報酬変更を国民年金事務所へ届け出るときの条件や必要書類について |
6 | 役員報酬変更を国民年金事務所へ届け出る際の送付状について |
早速見ていきましょう。
役員報酬変更の手続きの流れ
具体的な説明な入る前に、ざっくりと役員報酬変更の手続きを進めるにあたって、どんな流れになるのかというイメージをご用意させて頂きましたので、まずは下記にてご覧ください。
では、上記の手続きの流れをもう少し詳しく見ていきたいと思います。
役員報酬変更の検討から決定、議事録の作成までは原則3ヶ月
役員報酬には「定期同額給与」「利益連動給与(同族企業以外などの要件を満たす必要あり)」などがありますが、特別な事情がない限りは、本決算終了後、役員報酬の変更についての検討から決定、議事録の作成まで原則3ヶ月以内となっています。
例えば、役員報酬として最も一般的な「定期同額給与」は下記の通り定められています。
定期同額給与の改定 |
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その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までに継続して毎年所定の時期にされる定期給与の額の改定。ただし、その3か月を経過する日後にされることについて特別の事情があると認められる場合にはその改定の時期にされたもの |
参考/役員に対する給与(平成28年4月1日以後に開始する事業年度分) -国税庁-
例えば、3月が決算の会社で、役員の報酬増額を検討する場合、4月から6月の間に株主総会や取締役会などで役員報酬の増額を検討して、その決議された内容として議事録を作成し、7月から増額された役員報酬を該当の役員に支払うという流れになります。
なお、支払い開始時期については増額支給スタートが6月末からであっても、「定期同額給与」の要件を満たすというのが、国税庁の見解です。
ちなみに「定期同額給与」については、上記の通り手続きを済ませれば問題ありませんが、手続きの時期や実際に支払っていた金額に問題があると、「損金不算入」と判断されたり、悪質な場合は「利益操作」と判断されることがありますので、十分に注意しておきたいところです。
法人税法施行令 役員の給与等(第六十九条―第七十二条の三) |
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二 (定期同額給与の範囲は・・)継続的に供与される経済的な利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの |
参考/法人税法施行令 第十目 役員の給与等(第六十九条―第七十二条の三)
株主総会と取締役の議事録と合同会社の同意書の作成について
では、続いて役員報酬の変更を決議した書類である議事録についてその作成方法などについて見ていきたいと思います。
まず、株式会社の場合は株主総会または取締役会の議事録について見ていきましょう。
上記は実際に弊社で役員報酬を行うときに、いつも使用している取締役会議事録になります。
取締役の名称や日時、役員報酬の金額などを記入して、最後に捺印を行います。
押印を行う印鑑についてですが、代表取締役社長の印鑑については、法務局へ登記申請を行う際に提出した代表印(印鑑届出書)や、個人としての実印などで行います。(これまでに、左二つの印鑑を押印して、指摘を受けたことはありません。)
そして、取締役が押印する印鑑については認印で特に問題ありません。
ひな形として、下記にワードファイルをご用意しました。必要に応じて、下よりダウンロードしてご利用ください。(無料)
株式会社ではなく、合同会社などで役員報酬の変更を記録する際は、「同意書」を使用します。
同意書の場合は、より書き方が簡潔になっていますが、内容はほとんど変わりありません。
同意書についてもテンプレートとして、下記にワードファイルをご用意しました。必要に応じて、下よりダウンロードしてご利用ください。(無料)
役員報酬変更を税務署へ届け出るときの必要な条件や必要書類について
では続いて役員報酬変更で作成する議事録を作成する条件や必要書類について見ていきたいと思います。
まず、税務署への届け出につきましては、役員報酬で最も一般的な「定期同額給与」の変更については、届け出が必要ありません。
また上場企業などで役員報酬の一部として採用されている「利益連動給与(同族企業以外などの要件を満たす必要あり)」についても届け出は必要ありません。
ただ、事前に支払い時期を決めて役員報酬を支払う「事前確定届出給与」については、その名の通り、事前に税務署への届け出が必要になります。
では、この「事前確定届出給与」って何のためにあるの?と言いますと、これは平たく言いますと「役員賞与」、つまり役員のための”ボーナス”のような報酬を支払うために用意されています。
流れとしては、例えば、期末に役員のための賞与を設定して(「事前確定届出給与」)、予めその内容を議事録として作成し、管轄の税務署へ届け出るというケースがあります。
「事前確定届出給与」の届出書は下記のような書類になります。
なお、「定期同額給与」同様、「事前確定届出給与」も利益操作のために使われないように、支払い時期と届け出るまでの時期を定めていまして、「決議日から1ヶ月以内、決算日から4ヶ月以内」となっています。
法人税法施行令 役員の給与等(第六十九条―第七十二条の三) |
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3 | 法第三十四条第一項第二号 に規定する届出は、第一号に掲げる日(第二号に規定する臨時改定事由が生じた場合における同号の役員の職務についてした同号の定めの内容に関する届出については、次に掲げる日のうちいずれか遅い日。第六項において「届出期限」という。)までに、財務省令で定める事項を記載した書類をもつてしなければならない。 |
一 | 株主総会等の決議により法第三十四条第一項第二号 の役員の職務につき同号 の定めをした場合における当該決議をした日(同日がその職務の執行の開始の日後である場合にあつては、当該開始の日)から一月を経過する日(同日が当該事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から四月を経過する日(保険会社にあつては、当該会計期間開始の日から五月を経過する日。以下この号において「四月経過日等」という。)後である場合には当該四月経過日等とし、新たに設立した内国法人がその役員のその設立の時に開始する職務につき同項第二号 の定めをした場合にはその設立の日以後二月を経過する日とする。) |
参考/法人税法施行令 第十目 役員の給与等(第六十九条―第七十二条の三)
役員報酬変更を国民年金事務所へ届け出るときの条件や必要書類について
「事前確定届出給与」を除けば、役員報酬を変更したことを税務署へ届け出を行うことはそう多くはありませんが、一方で「定期同額給与」を変更すると、ほとんどのケースで届け出る必要があるのが国民年金事務所です。
ご存知の通り、社会保険料である健康保険料と厚生年金保険料は、報酬額によりその負担額が変動しますので、役員報酬に変更があるということは、社会保険料も変更になるからです。
届け出る要件については、「月額変更届の提出-日本年金機構-」をご覧頂ければと思いますが、17日以上勤務している役員で、2等級以上の昇給または降給があったときに届け出る必要があると憶えておけば問題ないかと思います。
では、国民年金事務所へ届け出る際の必要書類について見ていきたいと思います。
〇健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届
こちらはこれまでの役員報酬額と、新しくなった役員報酬額を記入し申請するための書類になります。
年金機構のサイトに記入例などもありますので、そちらを参考に記入すれば、問題ないかと思います。
〇役員報酬の変更を届け出るときの添付書類
年金事務所に役員報酬の変更を届け出るときは、原則、添付資料は不要ですが、改定月の初日から起算して60日以上遅延した届出の場合、または標準報酬月額が大幅に下がる場合には添付書類が必要となります。
上記の条件を満たし、被保険者が役員の場合の必要書類は以下の通りとなっています。
いずれか1つ | いずれか1つ | |
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1 | 株主総会または取締役会の議事録 | 所得税源泉徴収簿 |
2 | 代表取締役等による報酬決定通知書 | 賃金台帳の写し |
3 | 役員間の報酬協議書 | |
4 | 債権放棄を証する書類 |
役員報酬の変更を決議した際に作成した、株主総会または取締役会の議事録があるかと思いますので、そちらをコピーして添付すれば問題ないかと思います。
もう一方の所得税源泉徴収簿または賃金台帳の写しについては、顧問税理士さんがいれば、どちらかの書類を用意して欲しいとお願いした方が早いかと思います。
なお、自分で用意したいという方は、国税庁にテンプレートがありますので、そちらを参考にして頂ければと思います。
参考/給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿の作成 -国税庁-
役員報酬変更を国民年金事務所へ届け出る際の送付状について
最後に、年金事務所へ役員報酬の変更を届け出る際の送付状についてテンプレートをご用意させて頂きましたので、ご入用の方は下記よりダウンロードしてお使いいただければと思います。(無料)
黄色でハイライトした箇所を編集して、印刷すれば、そのまま送付状として利用できるようになっています。
まとめ
「役員報酬変更の手続きの流れと議事録などへ押印する印鑑のまとめ」と題してお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
役員報酬変更を自分で行ってみたいと思っている方に参考にしていただければ、幸いです。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
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